今年も五代友厚プロジェクトのメインイベントの五代友厚甲子園が証券取引所において開催された。
五代友厚の人生検証をするについては、学生たちにも我々同様、五代に関する書籍を読むことから始まる。
種々な人が色々な価値基準をもって書かれている本(一応、歴史本)から真実を見分けることは困難である。
人は事実を伝える時、物語を作りながら伝える。
物語はほとんど伝える人の主観、判断能力に左右される。
五代の生きた時代における歴史の科学的分析のない限り、ほとんどが単なる歴史小説であるとみなければならない。
五代の思想認識を理解するには、自己の客観的確知なくしては、およそ無理である。
数冊の五代に関する本なり語録を読んだだけで、およそ真実が語れるものではない。
五代の英国留学時における西欧を理解するには、リンカーンの南北戦争等の歴史的出来事、1789年のフランス革命、産業革命、ジョン・ロック・ルソーの社会契約論、マルクスの共産党宣言を理解する必要がある。
歩み始めた資本主義の時代なので、マルクスの資本論の概説本だけは読んでみる必要が大である。
フランス革命によって市民が勝ちとった人権宣言、ルソーの社会契約論等を基底として、我々は国民国家を作り上げて、明治政府もそれを学び、今日の日本の体制となっている。
国民国家の骨組みを現憲法、法体制、裁判も守ろうとしている。
しかし、人類の歴史は、それよりずっと長い。
だから国民国家は最近できたものであり絶対的正義ではない。
しかもその国民国家がグローバリズムの名のもとに今や壊れようとしている。
人間というのは「死者」という概念を有することで、他の霊長類と差別化された種である。
しかるに、日本の憲法では宗教的行事を国家が取り扱ってはならないという誤った条文を置いている。
五代友厚は英国留学した時、自らも学問をしたい、成長したかったが、それより今の日本を強くするため西欧の資本主義の基礎となる生産力と人材を日本に輸入するのに必死だったのである。
中国の様に当時の列強八ヶ国の植民化されないようにと、生き急ぐのである。
自らの評価すら考える余裕も時間も無く…。
残された我々日本人は、五代の後に続くよう努力すべきではないだろうか。
学生諸君、我々老人を助けてくれ。
廣田 稔